EXPERT COLUMN

リハビリは薬の増量を防ぐ可能性がある

2025/04/21

執筆者:KiyoリハビリPROS 
    理学療法士 清塚顕

監修:白庭病院 副院長
   川田和弘

長期的に薬物の増量を防ぐ可能性

リハビリを行う事のもう一つ大きなメリットは「リハビリを行う事で長期的に薬物の増量を防ぐ可能性がある」<引用:(1)(2)>という事です。これも見逃したくない内容です。

 パーキンソン病の運動症状を改善させる、薬物治療の中心となるのはレボドパ製剤という薬です。この薬は運動症状を改善してくれる効果のある薬なのですが、レボドパ製剤の使用期間が長いほど、投与量が多い程、運動合併症(注)という症状を引き起こしてします事が分かっています。ですので、主治医はこの薬の投与量が増加しすぎないようコントロールし、身体機能の維持と運動合併症のリスクのバランスを考えて治療されています。

 最近ではこの点に関し、興味深い有益な研究結果が報告されています。それは集中的なリハビリが運動機能の低下を遅らせ、薬物治療の増加を遅らせる可能性があるというものです。

 自らで能動的に運動を行っていく事が、レボドパの投与量の増加を抑え運動合併症を予防できる事は大きなメリットがあります。運動機能の調整を薬にまかせっきりで過ごすのではなく、自らの身体を守るためにリハビリを行っていく。
 これは将来の自分へのプレゼントでもあります。長期的にパーキンソン病と付き合っていくためにも、ぜひご自身で可能な範囲で構いませんので、できるだけ早くリハビリを開始される事をおすすめいたします。

 ただし、自己流で始めると効果的な方法でなかったり、途中で挫折してしまう可能性もあります。主治医に相談しリハビリの専門家である理学療法士や作業療法士の指導を受けられないか聞いてみてください。

(注)運動合併症というのは、代表的なものとしてウェアリングオフとジスキネジアが挙げられます。ウェアリングオフというのは内服後の薬の効いている時間が短くなってしまう状態です。ジスキネジアというのは自分の意思と関係なく頭や手足が勝手に動いてしまう症状です。

<引用文献>

  1. Frazzitta G, Maestri R, Bertotti G, Riboldazzi G, Boveri N, Perini M, Uccellini D, Turla M, Comi C, Pezzoli G, Ghilardi MF. Intensive rehabilitation treatment in early Parkinson’s disease: a randomized pilot study with a 2-year follow-up. Neurorehabil Neural Repair. 2015 Feb;29(2):123-31. doi: 10.1177/1545968314542981. Epub 2014 Jul 18. PMID: 25038064.
  2. Hortobágyi T, Sipos D, Borbély G, Áfra G, Reichardt-Varga E, Sántha G, Nieboer W, Tamási K, Tollár J. Detraining Slows and Maintenance Training Over 6 Years Halts Parkinsonian Symptoms-Progression. Front Neurol. 2021 Nov 19;12:737726. doi: 10.3389/fneur.2021.737726. PMID: 34867721; PMCID: PMC8641297.

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